施術中の添え手の位置|押さない手の置き方
2026/09/04
施術中、片手で圧をかけているとき、もう一方の手はどこにありますか。教材や動画では圧をかける側の手が大きく映るため、そうでない側の手は視界から外れがちです。しかし実際には、60分の施術で両手が同時に同じ動きをしている時間は3割ほどしかありません。残りの7割は、片方が圧をかけ、もう片方が支える、あるいは触れているだけという状態です。
この「押していない側の手」を添え手と呼びます。添え手は余った手ではありません。受け手の体が逃げないように押さえる、次に触れる場所を予告する、圧の反対側から体を受け止める。役割ははっきり分かれています。置き場所が決まっていないと、圧が逃げるだけでなく、受け手が不安を感じる原因にもなります。
この記事では、背部・脚・腕・首・腹部の部位ごとに、添え手をどこへ置くかを寸法で整理します。あわせて、置いてはいけない場所と、置き替える回数の目安もまとめました。
目次
1. 添え手には3つの役割がある
添え手の置き場所が決まらないのは、役割を1つに絞ろうとするからです。実際には3つあり、どれを担わせるかで置く場所が変わります。
役割1:支える
圧をかけた力は、体を通り抜けて反対側へ向かいます。背中を押せば体は前へ、腕を伸ばせば肩は前へ動きます。添え手はその逃げ道をふさぐ役割を持ちます。背骨の際を押すときに反対側の腸骨稜へ手を置くのは、骨盤が回るのを止めるためです。支える側の手を置かないと、圧の半分は体が動くことに使われ、狙った深さまで届きません。
役割2:予告する
次に触れる場所へ先に添え手を置くと、受け手は次の動きを体で理解できます。腕の施術に移る前に手首へ軽く触れておく。脚に移る前に膝の外側へ手を置く。言葉で説明しなくても、触れた場所が次の施術部位だと伝わります。
役割3:位置を保つ
首や腕のように動きやすい部位では、添え手が土台になります。首を横に倒す動きでは、後頭部を支える手が動くと角度そのものが崩れます。この場合の添え手は、施術の間ずっと同じ位置から動かしません。
1つの手技のなかで役割が入れ替わることもあります。大切なのは、いま自分の添え手がどの役割を担っているかを言葉にできることです。役割が言えないまま置いている手は、たいてい置き場所も間違っています。
2. 部位別・添え手を置く位置
添え手は、施術している部位から10〜15センチ以内に置くのが基本です。離れすぎると支える力が働かず、近すぎると両手がぶつかって動きが窮屈になります。部位ごとに具体的な位置を挙げます。
背部・腰部
背骨の際を母指で押すとき、添え手は反対側の腸骨稜、または肩甲骨の下角に置きます。手のひら全体を面で当て、指は開かずそろえます。背中は面積が広いため、圧をかける手が上へ移動したら、添え手も同じ方向へずらします。上下の間隔が30センチを超えたら、添え手を置き直すタイミングです。
脚
うつ伏せで大腿後面を押すとき、添え手は膝の少し上、膝関節から5センチほど頭側に置きます。膝の真上に乗せると関節を圧迫するため避けます。仰向けで脚を持ち上げる場面では、片手を踵の下、もう片手を膝の裏へ入れます。この2点で支えると、脚の重さが両手に分散します。
腕
前腕をほぐすときは、添え手で手首を軽く握って固定します。上腕をほぐすときは、添え手を肘の外側に置きます。腕は関節が2つあるため、施術している側から見て体幹に近い関節を押さえるのが原則です。
首
首は必ず両手を使います。片手で頭を支え、もう片手で施術します。支える手は後頭骨の下縁に、指4本を横に並べて置きます。この幅はおよそ8センチで、手のひらではなく指の腹で受けます。支える手を途中で入れ替えないよう、施術に入る前に位置を決めておきます。
腹部
腹部は支える骨がないため、添え手の役割が変わります。反対側の腰へ手を差し入れて下から受けるか、施術している手の上に重ねて圧を分散させます。重ねる場合、上の手は下の手の手根部に軽く乗せるだけにします。
横向きの姿勢では、添え手の位置がさらに重要になります。体位の切り替えと支え方についてはうつ伏せがつらい人の体位変換で扱っています。
3. 添え手の圧は自分の手の重さまで
添え手にどのくらいの圧をかけるか。目安は、自分の手の重さ分だけです。成人の片手はおよそ400〜500グラムで、これ以上を意識して加えると、添え手が第二の圧になってしまいます。
受け手からすると、2か所から同時に押されている状態は圧の方向が読めず、体に力が入ります。添え手は「置いてある」状態が正解で、「押している」状態は行きすぎです。
面で置く
添え手は手のひら全体で置きます。成人の手のひらの接地面はおよそ縦13センチ×横8センチで、指まで含めればさらに広がります。この面積すべてを使うと、1平方センチあたりにかかる力は指1本で押す場合の何分の一かになります。指先だけで支えると、その一点に力が集中して不快感につながります。
手の骨は片手で27個あり、その大半が指に集まっています。指を立てて支えると関節に負担が集中するのは、この構造のためです。手根部から指のつけ根までを1枚の板と考えて、そこを体に沿わせます。
圧をかける側との関係
押す・揉む・叩くのどれを行うかで、添え手に求められる役割が変わります。押す動作では支える力が最も必要になり、叩く動作ではむしろ添え手を離して受け手の動きを妨げないほうがよい場面もあります。手技そのものの使い分けは押す・揉む・叩くの使い分けにまとめています。
両手が届く高さかどうか
添え手の位置が定まらない原因が、ベッドの高さにあることは珍しくありません。台が高すぎると添え手を置くために肩が上がり、低すぎると前傾が深くなって添え手に体重が乗ります。両手を同時に、無理なく置ける高さかどうかを確かめてください。高さの決め方は施術ベッドの高さの合わせ方で扱っています。
4. 置いてはいけない場所と、置き替えの回数
置き場所を決めるのと同じくらい、置かない場所を決めておくことが必要です。
避ける場所
- 関節の真上(膝、肘、手首、足首)。関節をまたいで押さえると可動域を制限します
- 骨が皮膚のすぐ下にある部分(脛の前面、鎖骨の上、肩甲骨の内縁)。手の重みだけでも当たりが強く出ます
- 腹部の中央(みぞおちから臍まで)。支える目的で乗せるのは避けます
- タオルで覆っている範囲の境目。手を置くと布がずれ、開いていない部位まで見えることがあります
- 受け手の視界に入る顔まわり。うつ伏せで顔の横に手を置くと、目を開けたときに近すぎて驚かせます
置き替えは1部位につき2〜3回まで
添え手を頻繁に動かすと、受け手は施術者がどこを触っているのか分からなくなります。1つの部位を扱う数分のあいだに、置き替えは2〜3回までにとどめます。置き替えるときは、圧をかけている側の手を先に止め、添え手を移してから再開します。両手を同時に離す瞬間を作らないことが目安です。
触れた部位に気になる反応があったとき
添え手を置いた場所に赤みが出た、痛みを訴えられたという場合は、その部位への接触をやめ、別の位置に置き替えます。セラピストは皮膚や関節の状態を判断する立場にありません。原因を推測して伝えることはせず、記録に残すのは「その部位を避けた」という事実までにとどめます。赤みやかゆみ、痛みが数日続く場合は、医療機関を受診するようすすめてください。
支える動きは繰り返して身につく
添え手の使い方は、頭で理解しただけでは手が動きません。映像で手元を確認しながら、同じ動作を何度も繰り返すことで定着します。当学院の学習の進め方は【通学同等型】カリキュラムで紹介しています。
5. 両手の使い分けを学べる講座
片手で支え、もう片手で動かすという場面が最も多いのが、受け手の体を動かしながら進める技術です。グローバルボディケア総合学院の美スタイルデザイン講座は、姿勢・骨盤・体幹に着目したエクササイズを扱う通信講座で、支える手と動かす手の分担が繰り返し出てきます。
実技修業科目
胸・背中エクササイズ/腹部エクササイズ/脚・臀部エクササイズ/腕エクササイズ/首エクササイズの5科目です。部位ごとに支える位置が変わるため、この記事で扱った添え手の考え方をそのまま当てはめられます。
理論修業科目
美スタイルボディとは/続けられるエクササイズ/エクササイズと体づくり/注意事項などを学びます。
教材と期間
オリジナルDVD1枚、オリジナル実技テキスト1冊、人体骨格図、人体筋肉図、最終課題が届きます。標準学習期間は1ヶ月から3ヶ月で、最長1年まで延長は無料です。学習中の質問はメールで受け付けています。
費用と資格
通常価格48,400円のところ、資格支援特別価格は20,700円(57%OFF)です。クレジットカード24回払いなら月々979円になります。資格支援特別価格は時期により変動します。最終課題を1回提出すると、GBC認定1枚とITSA認定2枚の合計3枚の認定証が発行されます。試験料・認定料・送料・更新料はすべて無料で、更新料0円の永久資格です。希望者には厚生労働大臣認可(医政第742号)全国整体療法協同組合の認定証も発行できます(有料)。
6. よくある質問
添え手は必ず体に触れていないといけませんか
いいえ。叩く動作や、受け手に自分で動いてもらう場面では、添え手を離したほうがよいこともあります。触れ続けること自体が目的ではなく、支える・予告する・位置を保つのどれかを担っているかどうかが判断の基準です。役割がないと感じたら、体の横に下ろして構いません。
利き手はどちらに使うべきですか
圧をかける側に利き手を使うのが一般的ですが、施術の途中で立ち位置を変えれば、利き手が添え手側に回る場面も出てきます。どちらの手でも同じ位置に置けるよう、両方で練習しておくと立ち位置の自由度が上がります。
添え手が疲れてしまいます
添え手に力を入れすぎている可能性があります。手の重さ分だけを預ける感覚で、肘を伸ばしきらず、肩を下げた姿勢を保ってください。それでも施術者本人に痛みやしびれが続く場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
受け手から「その手は何ですか」と聞かれたら
「体が動かないように支えています」「次にこちらを施術します」と、行っていることをそのまま伝えれば十分です。施術で体がどうなるかという見通しは伝えず、いま何をしているかの説明にとどめます。
座位の施術でも添え手は必要ですか
必要です。椅子に座った姿勢では、押した力で上体が前へ倒れやすくなります。肩や首を施術する場合は、添え手を反対側の肩、または額に置いて上体を受け止めます。額に手を当てる場合は、事前に一声かけてから触れてください。



