施術中の声かけ例文|圧の確認と体位変換の言い回し
2026/09/04
施術中に何と言えばいいか。これは技術の問題ではなく、文言の在庫の問題です。決まった言い方をいくつか持っていれば、その場で考える必要がなくなります。
ここでは「丁寧に声をかけましょう」といった言い方をやめ、実際に口に出す言葉をそのまま並べます。60分の施術で声をかける回数はおよそ10回から15回。そのほとんどは、これから紹介する4つの場面に収まります。
目次
1. 声かけが必要な場面は4つしかない
施術中の発話をすべて書き出すと、目的は4つに分かれます。これから触れることの予告、体を動かしてもらう依頼、状態の確認、終わりの案内です。それ以外の会話は、必要があって発生するものではありません。
1回は10文字前後、2秒以内で
施術中の声かけは短いほど届きます。目安は10文字から15文字、口に出して2秒以内。「これから右の脚に移ります」で13文字です。これを超えると、受け手は目を閉じたまま内容を組み立て直すことになり、かえって集中を切ります。
答えは「はい」か「いいえ」で返せる形にする
確認の言葉は、受け手が首を動かさずに答えられる形にします。「いかがですか」は答えの幅が広く、うつ伏せの人には返しにくい質問です。「強すぎませんか」なら、はい、いいえ、のどちらかで返せます。
効果を予告する言葉は使わない
「軽くなりますよ」「流れが良くなります」といった言い方は、施術の結果を約束する表現にあたるため使いません。伝えられるのは、これから何をするか、どのくらいの時間か、という事実だけです。「ここは5分ほどかけます」は言えますが、「ここをほぐすと楽になります」は言えません。
無言の時間は20分を超えない
会話を絶やさない必要はありませんが、まったく声がかからない時間が長く続くと、受け手は今どこを触られているのか把握できなくなります。部位が変わるタイミングで必ず1回声をかければ、自然と20分以内には収まります。
2. 体を動かしてもらうときの文言
最も文言が必要になるのが、姿勢を変えてもらう場面です。ここは手順が決まっているぶん、言葉も定型にできます。
動く5秒前に予告する
いきなり「仰向けになってください」と言うと、受け手は寝入りかけた状態から急に体を起こすことになります。5秒前に予告を挟みます。
- 「あと少しで、仰向けになっていただきます」
- 「今の姿勢はあと1分ほどです」
動かす方向を先に言う
指示は「どうする」より「どちらへ」を先に出すと迷いません。
- 「左を下にして、横を向いていただけますか」
- 「そのまま、私のほうへ体を回してください」
- 「頭はそのままで、膝だけ立てていただけますか」
タオルは自分が持つと伝える
体位を変える瞬間は、タオルがずれる可能性が最も高い場面です。受け手が自分で押さえようとすると動きが止まるので、こちらが持つことを先に伝えます。
- 「タオルはこちらで押さえますので、そのままどうぞ」
- 「かけ直しますね」
体位を変える手順そのものはうつ伏せがつらい人の体位変換で整理しています。手順が頭に入っていれば、文言は上の3つで足ります。
終わりの起き上がりは3段階に分ける
施術後は、横向き、座位、立位と3段階に分けて起きてもらいます。それぞれに一言ずつ添えます。
- 「まず横を向いて、ゆっくりで大丈夫です」
- 「腕で支えながら、起き上がってください」
- 「そのまま少し座っていてください」
3. 圧と体調を確かめる文言
1回目の確認は開始から3分以内
圧の確認は、施術に入って3分以内に1回目を入れます。ここで合わなければ、残りの57分すべてが合わないままになります。
- 「この強さで痛くありませんか」
- 「もう少し強いほうがよろしいですか」
2回目以降は、部位が変わったときだけで十分です。60分の施術なら合計3回から4回に収まります。
「痛い」と言われたときは理由を聞かない
痛みを訴えられたら、まず手を止めて圧を抜きます。このとき「どうしてでしょうね」「疲れがたまっていますね」といった原因の推測は口にしません。セラピストは体の状態を診断する立場にありません。
- 「弱くしますね」
- 「この部分は飛ばして進めます」
施術後も痛みや違和感が続く場合は、医療機関の受診をすすめる一言を添えます。「数日たっても続くようでしたら、一度お医者さんにご相談ください」で足ります。
タオルを開く前に、開く範囲を言う
肌が出る場面では、開く前に部位を名指しします。開いてから説明すると順序が逆になります。
- 「背中を出させていただきます」
- 「腰まで開きます。すぐ戻します」
どこまで開き、いつ戻すかの基準は施術中のタオルの露出範囲にまとめています。範囲が決まっていれば、文言も「部位名+開きます」の形で固定できます。
下着に触れる可能性は施術前に伝える
下着のラインに手が近づく施術では、施術中ではなく、カウンセリングの段階で範囲を伝えて了承を得ます。施術が始まってから無言で動かすことはしません。
4. 受け手が言葉で答えられないとき
ここまでの文言は、受け手が「はい」「いいえ」を返せることを前提にしています。それができない相手のときは、確認の宛先が変わります。
確認は付き添いの方に向ける
赤ちゃんへの施術では、圧や時間の確認は保護者に向けます。ただし赤ちゃん本人への声かけをやめるわけではありません。触れる前に名前を呼び、触れる部位を言葉にすることは続けます。
- (本人へ)「これから足を触りますね」
- (保護者へ)「泣き始めたらすぐに止めますので、お知らせください」
赤ちゃんに触れる技術はベビースマイルタッチセラピー講座で学べます。服を着たまま行える手技も含まれており、月齢による違いも理論科目で扱います。
表情と体の動きを確認の代わりにする
言葉が返ってこない場合、確認は観察に置き換わります。眉が寄る、手足に力が入る、呼吸が速くなる。このいずれかが出たら、返事を待たずに圧を抜きます。
高齢の方には、動作の前に必ず一拍置く
耳が遠い場合、施術中の声かけは届いていないことがあります。動いてもらう前は、正面に回って顔が見える位置から伝えます。声を大きくするより、位置を変えるほうが確実です。
なお、聞こえにくさや目の不調について相談されたときも、原因は推測しません。答えられるのは施術の内容と時間までです。症状が続く場合は医療機関の受診をすすめます。
5. 動いてもらう施術を学べる講座
声かけの量が最も多くなるのは、受け手に体を動かしてもらう施術です。うつ伏せが取れない方や、寝返りに介助が必要な方を扱う場面では、手順と文言が一体になります。
グローバルボディケア総合学院の横向きボディケアセラピー講座は、横向きの姿勢で行う施術を扱う講座です。実技は肩部・頸部・頭部調整、腕・手の調整、背部・腰部調整、臀部・脚調整、経穴・経絡調整法、ストレッチング、寝返りの技法など。理論では横向きの利点、移動と寝返りの技法論、運動機能障害について、介護の原則基礎を学びます。
教材はDVD1枚、実技テキスト1冊、理論テキスト1冊、副読本の筋肉の名前としくみ事典、確認問題です。標準学習期間は2ヶ月から6ヶ月、最長1年まで延長できます。認定証は2枚(GBC認定・ITSA認定)で、確認問題を1回提出したあとに発行されます。希望者には厚生労働大臣認可の全国整体療法協同組合認定証も発行できます(有料)。
受講料は通常88,000円のところ、資格支援特別価格で31,000円(税込)。クレジットカードの24回払いなら月々1,446円です。試験料・認定料・送料・更新料はすべて無料で、再試験も無制限。なお、資格支援特別価格は時期により変動します。受講前の疑問は受講前の不安を解消するQ&Aにまとめています。
布団やマットの上でも成立する施術法なので、ベッドを置けない環境でも扱えます。
6. よくある質問
施術中はずっと話しかけたほうがよいですか
その必要はありません。部位が変わるタイミングで1回ずつ声をかければ、60分で10回から15回になります。それ以上は受け手の休息を削ることになります。
受け手から話しかけられたらどう応じますか
短く受け答えをして、こちらから話題を広げないのが基本です。受け手が話したい状態であれば会話は続きますし、そうでなければ自然に途切れます。判断を相手に委ねる形にします。
体の悩みを相談されたときはどう答えますか
答えられるのは、施術で何をするか、どのくらい時間をかけるか、その部位を扱えるかどうかまでです。原因の推測や、良くなるかどうかの見通しは伝えません。気になる症状が続く場合は医療機関の受診をすすめます。
「効きますか」と聞かれたら何と言えばよいですか
効果を断言せず、施術の内容に置き換えて答えます。「この部分は10分ほどかけて進めます」「今日は肩まわりを中心にします」という形なら、事実だけを伝えられます。
声かけの文言はメモしておくべきですか
最初のうちは書き出しておくと安定します。場面ごとに2つずつ、合計8つほど用意すれば、ほとんどの施術は回ります。慣れれば口をついて出るようになります。



