サロンで停電や地震が起きたときの施術の止め方と手順
2026/09/16
施術の途中で部屋が真っ暗になったとき、何から手をつけるかを決めていますか。停電や地震は年に何度も起きることではありませんが、起きたときには、うつ伏せで目を閉じている受け手が目の前にいます。自分ひとりで判断し、その場で動かなければなりません。
この記事では、自宅サロンで停電や揺れに見舞われたときに、施術をどう止め、どう終わらせるかを順番に整理します。明かりをいくつどこに置くか、続けるか終えるかを何で決めるか、暗い中で起き上がってもらうまでの手順まで、具体的な数字で書いています。備えとしてそろえておくものは、どれも数千円で用意できるものばかりです。
目次
1. 停電と地震では、最初にすることが違う
同じ「急に止まる」でも、この二つは最初の動作が逆になります。
停電のとき
まず手を離し、受け手に一声かけます。文言は十文字前後、二秒以内で足ります。「停電のようです。そのままでいてください」と伝え、動かないでもらうことが先です。暗い中で受け手が自分から起き上がろうとするのがいちばん危険だからです。
次に、電気が止まっているのが自分の家だけかを見ます。分電盤を見てブレーカーが下がっていれば復帰させれば戻ります。窓から外を見て近所の明かりも消えていれば、地域の停電です。この切り分けに一分もかけません。使っている機器が多い部屋ほどブレーカー側の可能性が上がるので、ふだんの配線はサロンの電源とコードの整え方で整理しておくと、この一分が短くなります。
揺れたとき
揺れている間は動きません。ベッドの長辺側、受け手の体側に立って、落下しそうな位置から離すだけにします。大きな揺れは十秒から二十秒で収まることが多く、長くても一分ほどです。その間に廊下へ走るほうが、つまずきや落下物に当たる危険が高くなります。
震度4になると棚の上のものが落ち始め、震度5弱では家具そのものが動き始めます。施術室でこの高さに何を置いているかを、一度見ておいてください。ベッドの頭側の壁に棚があるなら、そこは空けておくのが安全です。揺れが収まったら、受け手の体の上と周囲に落ちたものがないかを先に確認します。
2. 明かりをいくつ、どこに置いておくか
暗くなってから探すものは、どこにあっても見つかりません。置き場所と個数を先に決めておきます。
スマートフォンのライトだけでは足りない
スマートフォンのライトは五十ルーメン前後で、手元の一か所しか照らせません。片手がふさがるうえ、連絡にも使う道具なので、これを主にするのは無理があります。用意するのは次の二つです。
- LEDランタン一つ。二百から四百ルーメンあれば六畳の部屋全体が見える明るさになります
- 懐中電灯一つ。百から二百ルーメン。足元や段差を照らす用です
ランタンは床から一・二メートルから一・五メートルの高さに置くと、光が部屋全体に回ります。仰向けの受け手の顔に光が入らないよう、真上を向けて天井に当てると眩しさが減ります。ふだんの照明を考えるときと同じ発想で、施術中の照明の明るさもあわせて見ておくと置き場所が決めやすくなります。
置き場所は入口脇とワゴンの二か所
ランタンは施術室の入口脇、床から百二十センチから百四十センチの棚に。懐中電灯はワゴンの一番上の引き出しに。どちらも手を伸ばして二秒で届く位置です。二か所に分けるのは、片方に行けない状況があり得るからです。
電池は単三二本で連続十時間から二十時間もちます。乾電池の使用推奨期限は五年ですが、実際には年に一回、決まった月に点検するほうが確実です。点灯させて十秒見るだけで済みます。
ここで確認しておきたいのは、この明るさは施術を続けるための明るさではないということです。手元の細かい作業には五百から千ルクスが目安とされますが、ランタン一つではそこには届きません。明かりは、終わらせるために用意するものだと考えてください。
3. 続けるか、そこで終えるかを決める
迷う時間そのものが受け手を不安にさせます。判断の材料を三つに絞っておきます。
残り時間
六十分の枠で、残りが十分以内なら手短に締めて終わりにします。十五分以上残っているなら、そこで終える判断をします。暗い中で二十分三十分と続けるのは、押す場所も圧も見えないまま手を動かすことになり、施術として成立しません。どこまで進んでいたかの数え直しは、施術の途中での中断と再開と同じ考え方で、終了を早めるか一か所落とすかの二択です。
室温
空調が止まると、室温は夏も冬も動き始めます。夏は窓を開けます。給気側は五センチから十センチの隙間で足り、排気側を大きく開けます。冬はタオルケット一枚では足りないので、毛布を一枚かけ直します。毛布をどこに置いているかは、暗くなる前に把握しておいてください。
受け手の状態
怖がっている、声の調子が変わった、といった様子があれば、残り時間にかかわらず終わりにします。気分の悪さを訴えられたときは施術を始め直さず、明るい場所で座って休んでもらいます。落ち着かないようなら日を改めます。
揺れたときに体をぶつけた、ベッドから降りるときに足をひねったといったことが起きた場合は、その日の施術はそこで中止します。原因を推測して伝えることはしません。痛みや腫れ、しびれがあるとき、数日たっても続くときは、医療機関の受診をすすめてください。セラピストは状態を判断する立場にありません。
なお、途中で終えたときの扱いをどうするかは、事前に自分の中で決めておくと、その場で考えずに済みます。
4. 起き上がってもらってから帰るまで
ここがいちばん転倒の起きやすい場面です。順番を固定しておきます。
起き上がりは三段階、暗いときは各段階で十秒
横向き、座位、立位の三段階で起き上がってもらいます。明るいときと違うのは、それぞれの段階で十秒待つことです。目が暗さに慣れるまで時間がかかるうえ、ベッドの縁の位置が見えていません。座位になったところで、足が床についているかを声で確認します。
拭き取りと着替え
オイルを使っていた場合、触れていた部位一か所につき五秒の押さえ拭きをします。全身の仕上げ拭きは暗い中では無理なので、背中と脚だけにとどめ、残りは帰宅後に落としてもらう旨を伝えます。着替えの場所にはランタンを移して、受け手が一人になる時間をつくらないよう、扉の外で声の届く距離に立ちます。
足元と忘れ物
- 履物はベッドの足側、縁から三十センチ以内に置いておくと暗くても探さずに済みます
- 上がり框の段差は十五センチから三十センチあります。懐中電灯で段差そのものを照らします
- 忘れ物の確認はふだん三か所ですが、暗いときは装身具のトレー、ベッド周り、床、着替えの場所の四か所を明かりで順に見ます
- マンションの二階以上なら、停電中はエレベーターが止まっています。階段を使うことを先に伝えます
見送ったあと
決済に端末を使っている場合は動きません。この扱いも先に決めておくことです。見送ったら、その日の残りの予約に連絡を入れます。復旧の見通しが立たないうちは、先の二件まで一度に連絡しておくと、あとで慌てずに済みます。
5. 電源も広さも要らない施術をひとつ持っておく
ここまで読んで気づかれたと思いますが、止めるのが難しいのは、ベッドを使い、オイルを使い、着替えをともなう施術です。逆に、椅子に座ったまま着衣で受けられる施術は、明かりが落ちてもそのまま締めくくれます。
手札としてそういう施術をひとつ持っておくと、非常時に限らず、枠の短い日や設備の使えない日にも回せるようになります。
アイケア・不眠改善セラピー講座
アイケア・不眠改善セラピー講座は、椅子一脚で成立する構成です。実技は鎖骨ほぐし、肩部ほぐし、頸部ほぐし、頭部ほぐし、耳ほぐし、顔ほぐし、顔のツボ押しの七項目。ベッドも着替えも要りません。
教材はオリジナルDVD一枚、実技テキスト一冊、理論テキスト一冊、セルフケア実技テキスト一冊、確認問題に、ホットアイマスクとヒーリングミュージックが付きます。理論では目のしくみ、眼疲労と眼精疲労、不眠と不眠症といった内容を扱います。
受講料は通常五万六百円のところ、資格支援特別価格二万二千五百円。月々千六十四円の分割にも対応しています。標準期間は一か月から三か月、最長一年まで延長は無料です。認定証は三枚で、更新料はかかりません。資格支援特別価格は時期により変動します。
6. よくある質問
停電したら、その日の残りの予約は全部断るべきですか
すぐに全部を断る必要はありません。ブレーカーが原因なら数分で戻ります。地域の停電の場合は、電力会社の復旧情報を確認したうえで、先の二件に一度連絡を入れるのが現実的です。判断がつかない時点で「復旧しだいご連絡します」と伝えておけば、受け手は家を出る前に対応できます。
揺れたとき、すぐに受け手を外へ出すべきですか
揺れている最中に移動させるほうが危険です。まず動かず、収まってから起き上がってもらいます。うつ伏せの人がその場で立ち上がろうとすると、方向感覚がないまま動くことになります。三段階で起きてもらうのは、こういうときのためでもあります。
非常用に何をそろえておけばいいですか
最低限は、LEDランタン一つ、懐中電灯一つ、予備の乾電池一組、毛布一枚です。すべて施術室の中に置きます。生活空間の収納にしまってあるものは、暗い中で取りに行けません。年に一回の点検も忘れずに。
断水して手が洗えないときはどうしますか
手を拭くためのペーパータオルとウェットタオルを、施術室に常備しておきます。オイルの付いた手をそのまま受け手の衣類や玄関のものに触れさせないためです。水回りの動線については受講前の不安を解消するQ&Aのような基本の疑問とあわせて、ふだんから位置を見直しておくとよいでしょう。



