サロンの電源とコードの整え方
2026/09/09
施術室を整えるとき、広さや照明は最初に考えても、電源のことは後回しになりがちです。ところが実際に開いてみると、電気を使うものが次々に増えていきます。エアコン、間接照明、タオルウォーマー、加湿器、スピーカー、機器を使う施術ならヒーターも加わります。
そして自宅の一室を使う場合、その部屋にあるコンセントは2口が1か所、多くて2か所です。足りない分は延長コードで伸ばすことになり、気づけばベッドの下を何本ものコードが横切っている、という状態になります。
電源の設計に必要なのは、感覚ではなく数字です。コンセント1口が扱えるのは1500ワットまで。この上限に対して、自分の部屋で何ワット使っているのかを数えられれば、増設が要るのか、使い方を分ければ足りるのかが判断できます。ここでは機器ごとの消費電力から、延長コードの選び方、床を這うコードの始末までを順番に整理します。
目次
1. 施術室で電気を使うものを書き出す
最初にやることは、その部屋で電気を使うものを紙に全部書き出すことです。頭の中で数えると必ず漏れます。実際に部屋を見回して、コードが伸びているものを一つずつ拾っていきます。
常に動いているもの
エアコンは6畳向けで冷房時400ワットから600ワット前後、運転を始めた直後は800ワットを超えることがあります。空気清浄機は10ワットから50ワット、超音波式の加湿器は30ワット前後と小さいのですが、スチーム式は水を沸かすので200ワットから400ワットかかります。同じ加湿器でも方式で10倍近く違います。
間接照明はLED電球1個あたり5ワットから10ワットで、3か所に置いても30ワットに届きません。小型のスピーカーも5ワットから20ワット程度です。施術中の照明の明るさや音の環境を整えても、電力の面ではほとんど負担になりません。
温めるもの
電気を大きく食うのは、例外なく熱を出すものです。8リットル前後のタオルウォーマーは加熱時に200ワットから300ワット、保温に入ると100ワット前後まで下がります。フットバスは400ワットから600ワット、電気ケトルにいたっては1200ワット前後を一気に使います。
石を温める専用のヒーターも、機種によりますが300ワットから500ワット前後を使います。しかもこれは施術中ずっと入れっぱなしになる機器です。施術中の温度をどう保つかを考えるとき、室温の話と電力の話は必ずセットになります。
書き出したら合計する
1件の施術で同時に動いているものを合計してみてください。エアコン500ワット、タオルウォーマー200ワット、加湿器300ワット、照明とスピーカーで50ワット。これだけで1050ワットです。ここに石のヒーターが400ワット加わると1450ワット。あと少しで上限です。
2. 1500ワットの上限で足りるかを見る
1口も1回路も上限は同じ1500ワット
家庭のコンセントは100ボルト15アンペアが標準で、掛け合わせると1500ワットになります。これがコンセント1口の上限です。2口のコンセントでも、2口合わせて1500ワットまでで、口が2つあるから3000ワット使えるわけではありません。ここを勘違いすると、差し込んだ瞬間にブレーカーが落ちます。
さらに、分電盤から伸びる1回路の上限も同じく1500ワットです。一般的な住宅では1住戸に6回路から10回路が引かれていて、1つの回路が2部屋分のコンセントをまとめて受け持っていることも珍しくありません。つまり、施術室のコンセントと隣の部屋のコンセントが同じ回路ということがあり得ます。
回路を調べる方法
分電盤を開けると、小さなスイッチが並んでいて「洋室1」「台所」などと札が貼られています。札の分け方は住宅によってばらばらで、実際の担当範囲と合っていないこともあります。確実なのは、スイッチを1つずつ落として、施術室のどのコンセントが使えなくなるかを確かめる方法です。10分もあれば終わります。
同じ回路に電子レンジや電気ケトルがあると危険です。どちらも1000ワットを超えるので、施術中に別の部屋で誰かがケトルを使った瞬間に、施術室ごと電気が落ちます。自宅の一室を使う場合は、家族に「この時間は台所の家電を使わない」と伝えておくだけで防げます。
足りないときの三つの手
合計が1500ワットに近いときの選択肢は三つです。一つ目は、同時に使わないようにすること。タオルウォーマーは施術の1時間前に温めて、施術が始まったら電源を切っても保温は続きます。二つ目は、別の回路のコンセントから延長コードを引くこと。廊下や隣室のコンセントが別回路なら、そこから1本引けば負荷が分散します。
三つ目は、電気工事でコンセントを増設することです。既存の回路から分岐するだけなら容量は変わらないので、分電盤から専用の回路を新しく引く工事になります。これは電気工事士の資格が必要な作業で、自分では行えません。
なお、機器を増やすほど発熱と運転音も増えます。サロンの換気をどのタイミングで行うかと合わせて考えると、機器の台数そのものを見直す判断もしやすくなります。
3. コンセントの位置と延長コードの決め方
コンセントは床から25センチにある
住宅のコンセントは、床から25センチ前後の高さに付いているのが標準です。エアコン専用のものだけが床から180センチから200センチの高い位置にあります。つまり、施術室で使える電源はほぼすべて足元にあるということです。
施術ベッドを壁に寄せて置くと、その壁のコンセントがベッドの下に隠れます。抜き差しのたびにベッドを動かすことになるので、ベッドを置く前に、どのコンセントを生かすかを決めておきます。ベッドの頭側か足側のどちらか一方は、壁から60センチ以上あけてコンセントに手が届くようにしておくと後が楽です。
延長コードの長さは実測してから買う
延長コードは1メートル、2メートル、3メートル、5メートルが一般的です。目測で買うと足りないか余りすぎるかのどちらかになるので、コンセントから機器を置きたい場所まで、壁沿いに実際にメジャーを当てて測ります。壁を回り込む分だけ、直線距離より1メートル前後は長くなります。
余ったコードを巻いたまま使うのは避けてください。束ねた状態では熱が逃げず、コードの被覆が傷む原因になります。長すぎたら、余りは巻かずに壁際で往復させるか、短いものに買い替えます。
電源タップは口数と機能で選ぶ
電源タップは3口、4口、6口が主流です。口数が多いほど便利に見えますが、合計で1500ワットという上限は変わりません。6口のタップに600ワットの機器を3台つなげば、それだけで1800ワットになって危険です。口数は「差し込む場所の数」であって「使える電力の量」ではありません。
選ぶときに見るのは二つです。一つは個別スイッチの有無。口ごとにスイッチが付いていると、使わない機器を抜かずに切れます。もう一つはほこりの侵入を防ぐシャッター付きかどうか。差込口にほこりと湿気がたまると、そこから発熱する事故につながります。半年に1回はプラグを抜いて、乾いた布で刃の部分を拭く習慣にしてください。
スピーカーを受け手の頭から離して置く場合も、そこまで電源が届くかを先に確かめます。サロンのBGMと音量を決めるときに置き場所だけ考えて、あとから電源が来ていないと気づくことがよくあります。
4. 床を這うコードの始末
受け手が歩く線とコードを交差させない
施術室で受け手が歩くのは、入口からベッドまでと、ベッドから洗面所までの2本です。この2本の線の上をコードが横切らないように配線します。受け手は裸足か靴下で、しかも施術のあとは足元が定まらないことがあります。
どうしても横切る場合は、コードを壁際に寄せて回り込ませます。距離は長くなりますが、延長コードを1メートル長いものに替えるだけで済む話です。
モールで留める
壁際を通すコードは、配線モールで床に留めます。モールは高さ5ミリから10ミリの細いものを選べば、つま先が引っかかりません。両面テープで留めるタイプなら工具も要りません。ベッドの脚に沿わせるときは、結束バンドではなく面ファスナーのバンドを使うと、あとで組み替えられます。
抜けたときに困るものを把握しておく
足を引っかけてプラグが抜けたとき、いちばん困るのは温めている最中の機器です。石のヒーターが抜けていたことに施術の途中で気づくと、その日の予定が崩れます。温める系の機器は、人が通らない側の壁のコンセントに直接差すのが基本です。
もしコードにつまずいて転んでしまった場合は、その場で施術を中止します。打った場所に痛みや腫れ、しびれが残るときは、時間をおかずに医療機関の受診をすすめてください。セラピストは怪我の状態を判断する立場にありません。転んだ事実と、施術を中止したことだけを記録に残します。
5. 電源を使う施術を学べる講座
ここまで書いてきた電源の話が、いちばん具体的に効いてくるのは、電気で温める機器を使う施術です。グローバルボディケア総合学院のホットストーンセラピー講座は、その代表にあたります。
教材には、専用ヒーター(温度計付)と玄武岩25個が含まれます。石を温めるヒーターは施術の前から入れておく必要があり、施術中も通電したままになります。つまり、この施術を組み込むサロンでは、常時動いている機器が1台増えるという前提で電源を計画することになります。
実技は、うつ伏せでの背部・腰部・上肢のオイリングとストローク、臀部圧迫、下肢のオイリングとストローク。仰向けでは背部への置石、腹部のオイリングとストローク、手の平圧迫、デコルテのオイリングとストロークまでを扱います。理論には「玄武岩とは」「禁忌・注意事項」「準備」の科目があり、機器と石の扱いを事前に学ぶ構成です。
教材はオリジナルDVD1枚、実技テキスト2冊、理論テキスト1冊、専用ヒーター、玄武岩25個、施術用オイル、確認問題。標準学習期間は2ヶ月から8ヶ月で、最長1年まで延長できます。修了すると当学院とITSAの認定証2枚が発行されます。試験料・認定料・送料・更新料はすべて無料で、確認問題は100点満点中80点以上で合格、再試験は無料で回数制限がありません。
受講料は通常107,800円のところ、資格支援特別価格41,600円(61%OFF)です。クレジットカードは24回までの分割払いに対応しており、24回払いなら月々1,968円になります。なお資格支援特別価格は時期により変動します。
6. よくある質問
タコ足配線はどこまでなら大丈夫ですか
口数の問題ではなく、合計のワット数の問題です。1つのコンセントから伸びる全部の機器を足して1500ワットを超えなければ、口がいくつに分かれていても電気的には同じです。ただし電源タップに別の電源タップを差す使い方は、どこに何がつながっているか分からなくなるので避けてください。
ブレーカーが落ちたらどうすればよいですか
まず機器のスイッチを全部切り、プラグを抜きます。そのうえで分電盤のスイッチを上げ直し、機器を1台ずつ戻していきます。全部差したまま上げると、また同じところで落ちます。施術中に落ちた場合は、暗い中で受け手を動かさず、声をかけてから明かりを確保してください。
延長コードは何年で買い替えますか
製品には表示されていないことが多いのですが、コードの付け根が硬くなっている、差込口がゆるくてプラグが自重で抜ける、被覆に傷がある、このいずれかがあれば年数にかかわらず交換します。毎日抜き差しするものは傷みが早く、数年で買い替えになることもあります。
自宅の一室でも電源工事はできますか
賃貸か持ち家かで変わります。賃貸なら管理会社か大家への確認が先です。持ち家でも、分電盤から専用回路を引く工事は電気工事士の資格が必要で、自分では行えません。まずは現状で合計何ワット使うのかを数え、工事が本当に要るのかを確かめてください。使う時間帯をずらすだけで足りることが多くあります。
コードを隠すために床の敷物の下を通してもよいですか
すすめません。踏まれ続けることで被覆が傷み、傷んだことに気づけません。見た目を整えたいときは、壁際に配線モールで留めるほうが安全です。



